寄せられた予想エントリーの分析結果
2025年9月28日
7月20日、参議院議員選挙が実施されました。関係者のみなさま、有権者のみなさま、お疲れさまでした。
選挙ウォッチでは今回も、皆さんから自信のある予想のエントリーを募り、過去最多の533件のエントリーをいただきました。はじめてアカウント機能を導入し、当初はご不便をおかけすることもあったかと思いますが、多くの方にご参加いただけたこと、嬉しく思います。
すべての選挙区当選者の当選予想割合はこちらを、皆さんの予想のランキングはこちらをご覧ください。以下、予想全体の傾向の分析を掲載します。
選挙区
選挙区で出馬し当選した76名 (改選75名 + 補欠選挙1名) それぞれについて、どの程度のエントリーが当選と予想したかを確認しました。 各エントリーの小選挙区の結果の正答率の中央値は87%でした (つまり、半分以上の人が、正答率87%超えを叩き出しました)。エントリーいただいた議席予想が、どれも高いクオリティであったことがわかります。
選挙区域が県全体となり活動量が求められ、複数人区を多く含み、投票率が衆議院議員選挙と比べて低くなる傾向にある参議院議員選挙は、衆院選と比べて結果が読みやすいように思われます。3年前の参院選 (当時の分析記事) では、事前に言われていたように自由民主党が大勝した選挙でした。しかし今回の参院選は3年前とはうってかわり、事前に自由民主党の議席減が当然視されたものの、どの党がその受け皿になるのかが不透明で、先行きが読みづらい選挙となりました。 また、参院選としては過去30年で最大規模となる 58.51% という高い投票率が記録されました。今では自由民主党への支持が薄いとされている若年層を中心に高投票率となることは投票日の1週間前ごろから世論調査により予想されており (朝日新聞, 7月14日) 、浮動票のゆくえが注目されました。
当選された方々の勝利はどのくらい意外なものだったのかを見てみましょう。
76名中49名の当選者は、9割以上のエントリーに当選を予想されていました。情勢報道で確実な情勢が伝えられていた候補者は皆さんのほとんどに当選を予想されており、多くの方が情勢報道を参考にして予想を埋めたようです。
一方で、半分以上の方が当選を予想できなかった候補者が5名います。うち、1人区である福島県選挙区や栃木県選挙区では、多くの情勢報道が立憲民主党新人の名前を自由民主党現職の名前よりも先に挙げて「接戦」を伝えており、皆さんの多くは立憲民主党新人の勝利を予想しましたが、実際には自由民主党現職が議席を守る形となりました。また、複数人区である茨城県選挙区や福岡県選挙区も、最下位を巡る激戦が伝えられた選挙区であり、皆さんの予想が割れました。
選挙区 | 当選した候補者 | 当選予想の割合 |
---|---|---|
福島県 | 自由民主党 前職 森 まさこ | 5.82% |
茨城県 | 参政党 櫻井 祥子 | 20.83% |
東京都 | 国民民主党 奥村 祥大 | 22.51% |
栃木県 | 自由民主党 前職 高橋 克法 | 28.89% |
福岡県 | 公明党 前職 下野 六太 | 30.21% |
興味深いのは、ほとんどの情勢報道で当選圏外 (9〜11位) と分析されていたにも関わらず5位で当選した国民民主党新人の奥村祥大さんの当選を、およそ22%の方が予想していたことです。 情勢報道に縛られず、皆さんの予想以上の躍進を遂げた国民民主党の勢いを読んでいた方々が少なからずいたことがわかります。
上記の、情勢報道に関する事実については、三春充希さんの取りまとめを参考に執筆しました。
すべての選挙区当選者の当選予想割合はこちらでご確認いただけます。
比例代表
今回のエントリーでは、比例代表は初期状態のままでも提出できる仕様でしたので、以下の分析では、そのようなエントリーは除いています。有効なエントリーは533件中527件でした。
11ブロックで合わせて176議席を争う衆議院の比例代表とは異なり、参議院の比例代表では全国を単位とする50議席が争われます。予想の幅はより狭まりますが、それでも意外な結果は現れたようです。
皆さんの予想どおりの躍進を遂げた国民民主党・参政党
今回、躍進を遂げた国民民主党と参政党。野党第一党である立憲民主党の比例票 (739万票) をわずかに超える、762万票、742万票をそれぞれ獲得し、それぞれ7議席と並びました。この躍進は皆さんの予想したとおりとなったようです。
皆さんの予想よりも健闘した自由民主党・日本維新の会
2022年末に発覚した政治資金問題を発端として支持を落とし、昨年の衆院選では大きく議席を減らした自由民主党。今回も苦戦が当然視されましたが、その程度については予想が分かれました。7議席減の11議席と予想した人が最も多かったようですが、実際にはやや健闘し、6議席減の12議席となりました。
また日本維新の会は、2022年の参院選で立憲民主党を抜いて784万票を獲得したのをピークに、2024年の衆院選では510万票に減らしたうえ、その後の国民民主党や参政党の台頭によって、さらに票を減らすと見込まれていました。そうした背景からか、多くの皆さんは3議席と予想したようですが、実際にはやや持ちこたえ、437万票を獲得して4議席を獲得しました。
皆さんの予想よりも振るわなかった立憲民主党・公明党・日本共産党
自由民主党が数百万票を失うことが確実視されたことから、7割を超える方が、野党第一党である立憲民主党が受け皿になり、自由民主党が大勝した3年前の参院選での獲得議席数 (7議席) を上回る議席数を獲得すると予想しました。しかし実際には、立憲民主党は7議席から伸ばすことはできませんでした。
また、これまで強力な支持基盤を誇っていたものの、昨年の衆院選から支持を落としており、支持基盤の高齢化が指摘されている (東京新聞, 6月26日や時事通信, 7月11日など ) 公明党や日本共産党も、皆さんの予想をさらに下回る結果となりました。特に公明党が前回から2議席も落とすことを予想できていた方は25%に留まっていました。
そのほかの政党
昨年の衆院選での得票 (380万票) に近い387万票を得たれいわ新選組や、昨年の衆院選で114万票を獲得し政党要件を得たあと初の参院選を迎え298万票に伸ばした日本保守党については、多くの方が獲得議席数を的中させました。
この数年間、政党要件の2%を超える得票を得られるかの瀬戸際に立ち続けている社会民主党。今回も 2.1% の得票を得て、持ちこたえることができました。75%を超える方が0議席と予想した前回の参院選とは異なり、今回は7割近くの方が1議席と予想し、政党要件の維持を言い当てました。
今回が初めての選挙となった政治団体「チームみらい」が議席を獲得するかについては意見が分かれました。実際には政治団体「チームみらい」は政党要件に必要な2%を大きく超える2.6%の得票を達成し、1議席を得ました。これにより政治団体「チームみらい」は政党要件を満たす政党となり、選挙ウォッチでは今後チームみらいと表記されるようになります。
投票率
最後に、みなさんの投票率の予想についてもみてみましょう。
今回の選挙の大きな特徴は、参院選としては過去20年で最大級となる、58.51%という高投票率を記録したことにあります。参院選の投票率は衆院選よりも低い傾向にありますが、今回は、昨年の衆院選の投票率 (53.85%) をも大きく上回る異例の投票率となりました。
この投票率を、皆さんはどれほど言い当てられたのでしょうか。皆さんが比例代表の予想に入力した各政党・政治団体の得票数の総数から、皆さんの投票率予想を計算しました。
今回のエントリーイベントでは、投票率の予想を集計すると事前に告知していなかったため、はじめから現実的な得票数を入力していなかったという方もいらっしゃると思います。実際、得票数より得票率で予想するほうがわかりやすいと感じ、予想する得票率をパーセント単位で直接入力した方もいらっしゃるようです。そのため下記の分析では、2σ (σ: 標準偏差。2σの範囲は正規分布の場合に約95%) の範囲を超える外れ値を除外しています。この結果、対象となるエントリは512件でした。
多くの方が投票率の増加を見込んで予想していたことがわかります。直近の参院選の投票率よりも高い55%前後と予想した方が多数でした。しかし実際には、投票率は 58.51% とさらに高く、これほどの高い投票率を見込んだ方は1割未満に留まりました。
回答者のバイアス
以上の分析において留意していただく必要があるのは、選挙ウォッチの利用者にもバイアスがあることです。選挙ウォッチで予想をつける行為は、あるていど複雑で大変な作業であり、有権者全体と比べて政治的関心が強いことが推測されます。また、利用者の属性にも偏りがありえます。
選挙ウォッチでは、アカウント機能を導入した今回、アカウントページにて、皆さんの属性や支持政党や比例投票先を任意で募りました。その結果、およそ7割の方に何らかの回答をしていただいています。(未回答の方はぜひご回答いただけると幸いです!)
今回、予想を提出してくださったかたは大多数が男性で、半数が20代でした。また、(性別・年代別のクロス統計が提供されているため属性割合を補正して比較可能な) 朝日新聞の世論調査の結果と比べると、参政党やれいわ新選組の支持が有意に少なく、国民民主党や立憲民主党、自由民主党の支持が有意に多くなっており、既存政党への支持が多くなっています。そのなかでは、与野党に偏らずまんべんなく利用いただいているのが現状です。(ありがとうございます!)
詳細なデータ
ご支援のお願い
選挙ウォッチは、2021年のサービス開始以来、すべての機能を無料で提供しています。 企業や団体に依らず、中の人個人が空き時間にほぼ1人で機能開発・デザイン・運営を続けています。 また、見やすさを最優先として広告なしを貫いており、一切の収益を得ていません。
趣味ではじめたサービスが4年以上続き、多くの方にご利用いただけるようになったことを、とても嬉しく、誇らしく感じています。加えたい新機能もまだまだあり、これからももっと良いサービスとして運営していくつもりです。
しかし、サービスの規模が拡大するにつれ、経費や開発コストが上がってきており、可能であれば、サーバー代くらいは賄えるような収益をあげたいというのが実情です。サーバー代が、平時は月に1,000円弱、国政選挙シーズンには数万円ほどかかってしまっています。今回の参院選では5万円ほどの出費となりました。
このたび、サーバー代をはじめとする経費や開発コストなどの負担を軽減するため、利用者の皆さまから金銭的にご支援いただけるようなシステムを準備しました。任意の額で、一回きり、または毎月でのご支援を選択できます。一定の基準を満たした支援者の方には、支援者限定の特典も検討しています。余裕のある方は何卒ご検討いただけますと幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。
以前より選挙ウォッチを利用されている方には、2021–2023年に設置していた「寄付フォーム」の発展版といえば伝わりやすいかもしれません。当時は一回きりの寄付のみを受け付けていましたが、月額での継続的な支払い機能を追加し、対価 (支援者特典) を追加したシステムとしています。