参議院議員選挙のしくみ
日本の国会は衆議院と参議院から成っており (二院制)、それらの構成員である国会議員を選ぶのが衆議院議員選挙 (衆院選)、参議院議員選挙 (参院選) です。
参議院議員の任期は6年で、3年に一度、議員の半数を改選します。つまり、2019年に選ばれた参議院議員は2025年に、2022年に選ばれた参議院議員は2028年に、次の選挙に挑むことになります。
参院選の2つの制度
参院選は選挙区制と比例代表制の2つの選挙により行われます。つまり、投票所では投票用紙を2枚書くことになります。
参議院の現在の定数248名のうち、改選を迎えるのは、その半分の124名。そのうち74名が選挙区制で、50名が比例代表制で選ばれます。[1]
選挙区制
基本的に都道府県単位で選挙区が設定されており、各選挙区には人口に合わせて1人から6人の改選定数が設定されています。
一番定数が大きいのは、東京都の6人です。次いで、埼玉県・神奈川県・愛知県・大阪府が4人。北海道・千葉県・兵庫県・福岡県が3人。茨城県・静岡県・京都府・広島県が2人。そのほかの選挙区が1人となっています。[1] 定数によって選挙区を表す言い方として、「1人区」「2人区」…といった呼び方がよく使われます。
参院選の選挙区制の改選定数は74名と、衆議院の289名よりもずっと少ないため、各都道府県に最低1人を割り当てる方式だと、一票の格差の問題 (議員1人あたりの有権者の数が選挙区ごとに異なることから格差が生まれている問題) の解決がより難しくなってしまいます。 そのため、合同選挙区、通称「合区」という、人口の少ない都道府県を1つに合わせた選挙区が2016年に生まれました。現在鳥取県・島根県選挙区と徳島県・高知県選挙区の2つの合区があります。 これにより、選挙区の数は合計45個となっています。[1][2]
各選挙区の定数は、本サイトの選挙区制ページを見るとひと目でわかりますので、ぜひご覧ください。
複数人区の特徴
すべての選挙区が1人区 (小選挙区制) である衆院選と違い、参院選の場合、「複数人区」とも呼ばれる、2人以上を選ぶ選挙区が13個あります。
こうした区では、1位がとれずとも、2位(, 3位, ...) であっても当選できるため、多数派でない候補や無所属の候補でも比較的当選しやすく、より多様な民意を反映させられます。
支持の多い政党の場合、1つの複数人区で2人を擁立するという選択肢も生まれます。予想通りに票が集まらなかった場合は、候補が1人だったら十分に当選する票数が2人に分かれることで2人とも落選してしまう「共倒れ」が起こるリスクもあるので、政党には難しい判断が求められます。
1人区の特徴
複数人区も特徴的ですが、選挙区制で選ばれる74人のうち半分近い32人は、1人区から選ばれます。しかも、衆院選と違って比例復活の制度がないため、2位の候補はどれだけ惜しい結果であっても当選できません。そのため、1人区での勝敗のゆくえはとても重要です。
比例代表制
各政党が候補者の名簿を用意し、有権者は、名簿を提出している「政党の名前」か、その名簿に載っている「候補者の名前」のいずれかを投票用紙に記入します。[3]
政党が事前に当選順位を決めることができる衆院選と違って、参院選の比例名簿では、順位が決まっていません (非拘束名簿式)。まず、各政党の政党名と個人名の得票数の合計にしたがって、ドント式という配分方法によって、議席数が得票率にある程度「比例」するような形で各政党に配分されます。次に、各政党内で、候補者の個人名が書かれた票の数が多かった順に当選者が決まります。
地方ごとに11のブロックに分けられ、それぞれ6人〜30人を選ぶ衆院選とは違って、全国という1つの単位で、50名を選出します。[1]そのため、小さな政党も比較的議席を得やすい制度となっています。また、有権者は全国どこに住んでいても自分の好きな候補者に票を入れられるので、より幅広い票を寄せることができます。一方で、どうしても知名度競争になってしまうため、政党がタレントなどの有名人を擁立する傾向があったり[4]、組織票を入れやすいため、影響力の大きい組織が政党に組織内候補を送り込んだりする傾向があったり[5][6]といった面もあります。
特定枠
上で「参院選の比例代表制は非拘束名簿式である」と説明しましたが、2019年の参院選からは、通称「特定枠」と呼ばれる制度が導入されています。政党が事前に決めた候補を順位の一番上に固定することができる制度で、個人としての選挙運動が認められていない[7]かわりに、最も優先的に当選することができます。
この制度の導入により、参院選の比例代表制は、非拘束名簿式と拘束名簿式のハイブリッドといえる、より複雑な制度となりました。導入の背景には、合区の導入による選挙区数の減少により自らの地盤を失ってしまった議員を救済したいという意図があったとされています。[8]
なお、「特定枠」という言葉は通称であり、正式には特定枠の候補者のことを「優先的に当選人となるべき候補者」といいます。
衆院選との性質の違い
以上のような選挙制度の違いが、衆議院と参議院の性質の違いに結びついています。
衆院選は、すべての選挙区が「1人区」であるため政党の支援を受けることが重要であり、比例代表制での当選順位も政党が決めるため、政党の影響力がひときわ強いと言えます。一方で参院選は、複数人区では少数派や無所属でも当選しやすく、比例代表制での当選順位も (特定枠を例外として) 個人名を書かれた票の数で決まりますから、より個人重視の制度と言えます。 また、衆議院は事実上首相が好きなタイミングで解散させることができ、2, 3年で入れ替わることが多いですが[9]、参議院には解散の制度はなく、一度当選した議員は必ず6年間、議員であり続けます。6年の間に立場を変え、所属する政党を変える人も、不祥事を起こす人もいます。「熟慮の府」とも呼ばれる[10]参議院の議員を選ぶときには、より慎重に候補者個人を見極めることが大切でしょう。
参考文献
- 選挙の種類 | 総務省
- [早わかり 参院選Q]一部選挙区、なぜ合区に?
- よくある質問 | 選挙について | 参議院
- 参院選に著名人が出馬するのはなぜ?2022年出馬がウワサされる芸能人や有名人は?選挙ドットコムちゃんねるまとめ | 選挙ドットコム
- [早わかり 参院選Q]組織内候補とは?…業界団体・労組の擁立候補
- 【図解・政治】参院選/主な業界・労組系候補の集票力(2016年7月) | 時事ドットコム
- "特定枠"とは? 参院選 | NHK選挙WEB
- [早わかり 参院選Q]比例選特定枠とは?…他候補に優先して当選 | 参院選2019 | 読売新聞オンライン
- 衆院在職1454日、戦後2番目の長さ…平均は995日 | 衆院選2021 | 読売新聞オンライン
- 熟慮の府とは - コトバンク