寄せられた予想エントリーの分析結果

2025年4月14日

昨年10月27日、衆議院議員選挙が実施されました。関係者の皆さま、有権者の皆さま、お疲れさまでした。

『選挙ウォッチ』は、衆院選2021、参院選2022に続き、創設以来3度目となる国政選挙を迎えました。『選挙ウォッチ』は、出馬が予想される顔ぶれの最新情報の常時掲載を日本で初めて行っただけでなく、小選挙区・比例代表それぞれの結果を簡便に予想できる議席数予想支援機能を提供していることも大きな特徴です。今回も開票直前に、自信のある議席数予想のエントリーを皆さんから募集し、10月25日から27日の短い期間ではありましたが、前回の3倍近くにあたる498件の有効なエントリーをいただくことができました。

また今回は、個人情報に関わるアンケートを任意で募り、85%にあたる423人にご協力いただきました。大変ありがたいデータをいただくことができ、感謝の気持ちでいっぱいです。

すべての小選挙区当選者の当選予想割合はこちらを、皆さんの予想のランキングはこちらをご覧ください。以下には、予想全体の傾向の分析を掲載します。

なお今回、中の人の私的な都合により、本記事やランキングの掲載が大きく遅れてしまいました。ご心配をおかけしましたこと、お詫び申し上げます。

小選挙区

小選挙区から立候補し当選した候補者289名のそれぞれについて、どの程度のエントリーが当選と予想したかを確認しました。

各エントリーの小選挙区の結果の正答率の中央値は87%でした (つまり、半分以上の人が、正答率87%超えを叩き出しました)。すべてのエントリーが当選と予想し、実際に当選した候補者は、11人いました。 ご応募いただいた議席予想が、どれも真剣に予想されたもので、高いクオリティであったことがわかります。

一方で、衆議院議員選挙では「まさか」の当選もつきものです。次の9名の候補者は特に、ほとんどのエントリーが当選を予想していなかったにもかかわらず (2割未満)、当選を果たしました。

多くの人が予想を外した小選挙区
選挙区当選した候補者当選予想の割合
愛知県第16区
国民民主党
福田 徹
1.41%
広島県第4区
日本維新の会
比例前職
空本 誠喜
2.21%
大分県第2区
無所属
広瀬 建
7.43%
千葉県第10区
自由民主党
小池 正昭
8.84%
東京都第30区
立憲民主党
五十嵐 衣里
9.04%
福岡県第11区
日本維新の会
村上 智信
11.24%
滋賀県第1区
日本維新の会
比例前職
斎藤 アレックス
17.87%
静岡県第4区
国民民主党
比例前職
田中 健
18.47%
埼玉県第9区
立憲民主党
杉村 慎治
18.67%

目を引くのは、日本維新の会公認で大阪府外で出馬し当選した候補者のうち、当選10回の前原誠司さん (京都府2) を除く3名すべてがこの表に載っていることです。これらの小選挙区 (広島県4福岡県11滋賀県1) はいずれも、野党第一党である立憲民主党や、 今回躍進した国民民主党が候補者を出さなかった小選挙区です。そうした小選挙区の一部では、皆さんの予想に反して、日本維新の会の候補者が「反自民」の受け皿になったといえるでしょう。

公明党は、2021年の選挙では擁立した9名全員が当選するなど、勝てる小選挙区を見極め集中的に戦う政党です。特に関西では強固な地盤を持ち、6つの小選挙区を抑え、「常勝関西」とも呼ばれました。 ただし2021年の選挙では、大阪府を強固な地盤としている日本維新の会と、大阪府・兵庫県で完全なすみ分けを行っていました。ところが、今回は日本維新の会が大阪府・兵庫県の全小選挙区で候補者を擁立。結果、大阪府内では日本維新の会に全敗となりました。加えて、北海道10埼玉県14愛知県16でも敗北し、戦績は4勝6敗。今回の選挙は与党公明党にとっても厳しい結果となりました。

こうした結果を予想できなかった人は多いようです。事前の情勢調査で、明らかな差がついている情勢が伝えられていたのは、大阪府3大阪府5兵庫県2広島県3の4つ。そのほかでは、公明党の勝利を予想した人が多かったようですが、実際には及びませんでした。

公明党が挑んだ接戦区の結果
選挙区当選した候補者当選予想の割合
埼玉県第14区
国民民主党
比例前職
鈴木 義弘
22.49%
大阪府第6区
日本維新の会
西田 薫
45.58%
大阪府第16区
日本維新の会
黒田 征樹
49.80%
北海道第10区
立憲民主党
比例前職
神谷 裕
60.44%
東京都第29区
公明党
前職
岡本 三成
93.17%
兵庫県第8区
公明党
前職
中野 洋昌
93.37%

今回躍進した国民民主党は、比例代表のみならず小選挙区でも多くの候補者が当選を果たしました。 これは多くの方にとって意外だったようです。2021年の衆院選では、以前に小選挙区で当選していた候補者6名全員が継続して小選挙区当選した一方、そうでなかった候補者15名はいずれも、新たに小選挙区当選を叶えることができませんでした。そうした「現職は強いが新人は弱い」という傾向が今回もみられると予想した人が多かったようですが、今回は、37名中7名が新たに小選挙区当選を勝ち取る結果に。その多くは立憲民主党が候補者を出さなかった小選挙区でしたが、立憲民主党が候補者を出した小選挙区でも勝利した小選挙区 (愛知県16秋田県3) がある点は注目です。

国民民主党の候補者の勝利の予想割合
選挙区当選した候補者当選予想の割合
愛知県第16区
国民民主党
福田 徹
1.41%
静岡県第4区
国民民主党
比例前職
田中 健
18.47%
埼玉県第14区
国民民主党
比例前職
鈴木 義弘
22.49%
埼玉県第13区
国民民主党
橋本 幹彦
38.76%
秋田県第3区
国民民主党
村岡 敏英
58.23%
愛知県第11区
国民民主党
丹野 みどり
59.44%
愛知県第7区
国民民主党
日野 紗里亜
73.09%
茨城県第5区
国民民主党
前職
浅野 哲
99.80%
愛知県第2区
国民民主党
前職
古川 元久
99.80%
長崎県第1区
国民民主党
前職
西岡 秀子
99.80%
香川県第2区
国民民主党
前職
玉木 雄一郎
100.00%

予想が割れた選挙区

当選予想における1位と2位の差が極めて小さかった小選挙区の上位6つを以下に挙げます。

予想が割れた小選挙区
選挙区当選した候補者当選予想の割合
東京都第24区
無所属
前職
萩生田 光一
48.39%
神奈川県第18区
立憲民主党
宗野 創
50.20%
神奈川県第7区
立憲民主党
比例前職
中谷 一馬
50.80%
千葉県第6区
立憲民主党
安藤 淳子
52.01%

比例代表

比例代表選挙における、みなさんの予想議席数と、実際の議席数をみていきましょう。まずは簡単に、全11ブロックの合計での予想議席数を確認します。

なお、今回の議席数予想エントリーイベントでは、小選挙区はすべて埋めないと提出できない仕様であったのに対し、比例代表は初期状態 (= 前回の衆院選での得票数) のままでも提出できる仕様であり、小選挙区のみを予想して提出した方も一部いらっしゃいました。そのため、比例代表の分析においては、すべての比例ブロックにおいて予想をしたエントリーのみを分析対象としています。これは、498件中477件にあたります。

皆さんの予想どおり大きく議席を減らした与党・自由民主党公明党

今回の選挙の特徴は、与党である自由民主党公明党両党が大きく議席数を減らしたことにあります。この変化は (やや過剰だったかもしれませんが) 概ね、皆さんが予想した通りとなりました。

立憲民主党は多くの予想ほどには議席を増やさず

それでは、自公が逃した票はどこへ行ったのでしょうか。皆さんの予想では、立憲民主党がその受け皿になるという予想が多かったようです。実際には、立憲民主党は比例の議席数を5議席増やしたものの、多くの方々の予想よりは少ない結果となりました。

日本維新の会日本共産党は、多くの予想以上に議席数を減らした

また、日本維新の会日本共産党も比例の議席数を増やすことはできませんでした。前回 (2021年) の衆院選で躍進した日本維新の会は、今回は比例の議席数を減らすと予想した方が多かったようですが、実際の減り幅は多くの予想以上となりました。また、日本共産党の減らし幅も、ほとんどの人の予想以上でした。

国民民主党れいわ新選組参政党は、皆さんの予想を大きく超えて議席を増やした

今回、比例の議席数を大きく増やした国民民主党。ほぼすべての方が比例の議席数の増加を予想したものの、5議席から17議席への躍進を予想できた方はあまりいませんでした。

また、れいわ新選組参政党の比例議席数増もほとんどの人にとって予想外だったようです。れいわ新選組が比例議席数を3議席から9議席へと増やしたことや、参政党が比例の議席数を3議席増やしたことは、ごく一部の方しか予想できていませんでした。

政党要件を満たし新たに国政政党となった日本保守党

今回が初めての国政選挙となった政治団体「日本保守党」が比例で何議席獲得するかは、皆さんのなかで意見が大きく分かれていましたが、実際には2議席を獲得する結果となりました。(これにより日本保守党は政党要件を満たしましたので、『選挙ウォッチ』では今後「日本保守党」と表記されることになります。)

社会民主党みんなでつくる党、およびその他の政治団体については、ほとんどの方が0議席と予想し、実際にも0議席でした。

回答者のバイアス

最後に、回答者のバイアスについても触れておきます。今回のイベントは、あくまで『選挙ウォッチ』ユーザーによるものであり、また「289ある小選挙区と11ある比例ブロックすべてを予想する」という手間のかかる作業をこなした方々によるものですから、有権者全体の予想傾向を適切に代表したものとはいえません。
今回はじめて、エントリー提出の際に任意でのアンケートを求め、多くの方が回答してくださいました。結果として、以下のことがわかりました。
  • 東京都在住の方が多いこと
  • 小選挙区では、立憲民主党の候補者や自由民主党の候補者に投票した方が多く、ほぼ同数であったこと
  • 国民民主党立憲民主党を支持し、あるいは比例代表で投票した方が多いこと
また、今回はアンケートで聞きませんでしたが、中の人個人の意見としては、サービスの特性や、これまでまれに行ってきた調査から、ユーザー層について一般と比べて次のような傾向があると推測しています。
  • 投票に行く人が多い
  • 支持政党を明確にしている人が多い
  • 若年層が多い
  • 男性が多い
これまでに掲載した結果は、以上のバイアスを勘案したうえでご評価いただくことをお勧めします。

以下、詳細です。

居住地

居住地する都道府県について、498人中389人 (78.1 %) の方にご回答いただきました。その内訳は東京都 23.9 % (国勢調査による人口は全国の 11.1%)、大阪府 9.0 % (同 7.0 %)、神奈川県 8.5 % (同 7.4 %)、埼玉県 6.7 % (同 5.9 %)、兵庫県 5.7 % (同 4.4 %)、愛知県 5.4 % (同 6.0%)、…となっており、実際の人口割合と比べて東京都の利用者がかなり多くなっています。

支持政党

支持政党について、498人中399人 (80.1 %) の方にご回答いただきました。その内訳は、支持政党なしが 29.8 %、国民民主党が 28.3 %、立憲民主党が 20.8 %、自由民主党が 11.5 %、日本維新の会が 4.3 %、…となっています。回答者というバイアスがあるものの、世間一般の数字と比べて自由民主党支持の方が少なく、国民民主党支持の方が多いことに注意が必要です。

支持政党なしと答えた方の比例投票先は、国民民主党が 39.4 %、立憲民主党が 25.5 %、自由民主党が 10.6 %、…となっています。

小選挙区投票先

小選挙区の投票先について、498人中330人 (66.3 %) の方にご回答いただきました。その内訳は、立憲民主党の候補者が35.8 %、自由民主党の候補者が33.3 %、…となっています。

比例代表投票先

比例代表の投票先について、498人中355人 (71.3 %) の方にご回答いただきました。その内訳は、国民民主党が 41.1 %、立憲民主党が 29.9 %、自由民主党が 10.4 %、日本維新の会が 7.0 %、…となっています。

以下、参考に、朝日新聞「2024年11月衆院選直後調査」のデータと併記して掲載します。ここで朝日新聞のデータを採用したのは、年代ごとや性別ごとといった詳しいデータが公開されているためです。男性でないユーザーには大変申し訳ないのですが、過去の調査では『選挙ウォッチ』ユーザーの9割ほどが男性であったため、男性若年層の数字を比較用に掲載しています。

国民立憲自民維新なし / 無投票無回答
支持率 (選挙ウォッチ)22.6 %16.7 %9.2 %3.4 %23.9 %19.9 %
支持率 (朝日調査 全体)10 %13 %26 %2 %29 %10 %
支持率 (朝日 18〜29歳 男性)27 %1 %14 %4 %30 %13 %
支持率 (朝日 30代 男性)17 %6 %25 %3 %30 %8 %
比例投票先 (選挙ウォッチ)29.3 %19.9 %7.4 %5.0 %-28.7 %
比例投票先 (実際の選挙結果)5.9 %11.1 %14.0 %4.9 %46.2 %-
比例投票先 (朝日 全体)9 %15 %20 %3 %28 %10 %
比例投票先 (朝日 18〜29歳 男性)22 %4 %11 %2 %45 %4 %
比例投票先 (朝日 30代 男性)15 %13 %14 %6 %36 %6 %

詳細なデータ